「ハラスメント防止の研修も窓口も整えたのに、相談が一向に上がってこない」「他社はどのように取り組んでいるのか知りたい」と感じていませんか。ハラスメント対策は法令で義務化が進む一方、形だけの対策では被害の芽を見逃してしまいます。本記事では、公的な資料や実際の導入事例をもとに、取り組みを機能させるためのポイントを解説します。
ハラスメント対策は「やったほうがよいもの」から「やらなければならないもの」へと変わっています。まずは職場の現状と法令の動きを押さえておきましょう。
調査データから見える職場のハラスメントの現状
厚生労働省が公表した令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書では、過去3年間の相談件数の推移として、セクシュアルハラスメントのみ「減少している」が最も多く、カスタマーハラスメント(顧客等からの著しい迷惑行為)のみ「増加している」が「減少している」を上回り、それ以外のハラスメントは「件数は変わらない」が最も多いという結果が示されています。
対策が進んだ領域がある一方で、新たな課題が広がっている状況がうかがえます。
また同調査では、今後必要な対策として36.5%の企業が「ハラスメント(ハラスメントの行為者)に対する規制」を挙げています。
企業側も、研修や周知といった従来型の取り組みだけでは限界があると感じていることの表れといえます。
行為そのものを抑止し、発生時に適切に対処できる体制づくりが、いま多くの組織で求められているのです。
相談件数が横ばいであることは、必ずしも被害が少ないことを意味しません。
声を上げられないまま我慢している従業員がいれば、その分は件数に表れないからです。
表面上の数字だけで安心してしまうと、問題が深刻化してから発覚するおそれがあります。
数字の裏にある「見えない被害」をどう拾い上げるかが問われています。
パワハラ防止措置は義務、カスハラ対策も義務化へ
改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)により、パワーハラスメントの防止措置は2022年4月から中小企業を含むすべての事業主に義務付けられています。
方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応などが求められ、取り組みが不十分な場合は行政指導の対象にもなり得ます。
さらに、カスタマーハラスメントについても、2026年10月から事業主に雇用管理上の措置を講じることが義務化されます。
顧客や取引先からの著しい迷惑行為から従業員を守る体制づくりが、業種を問わず必要になります。
社内のハラスメントだけでなく、社外からの被害も視野に入れた対策が欠かせません。
法令対応はあくまで最低限のラインです。
規程を整えて窓口を設置しても、従業員が「相談しても無駄だ」と感じていれば、制度は書類上だけのものになってしまいます。
義務を果たすことと、実際にハラスメントを防げる組織になることは別物だと捉え、運用面まで含めて取り組みを設計することが重要です。
ハラスメント防止の取り組みに共通する3つの基本ステップ
効果を上げている取り組みには、「方針を示す」「認識をそろえる」「声を拾う」という3つのステップが共通しています。どれか一つが欠けると、対策全体が機能しにくくなります。
トップが方針を明確に示し、全社に周知する
ハラスメント防止の出発点は、経営トップが「ハラスメントは許さない」という方針を明確に示すことです。
人事部門だけが旗を振っていても、現場では「また人事が何か言っている」と受け流されがちです。
トップ自身の言葉で発信されることで、組織全体の優先課題であることが伝わり、管理職の意識も変わりやすくなります。
方針は就業規則や社内規程に明記し、行為者への処分の考え方も併せて示しておくことが大切です。
何がどのような処分につながるのかが曖昧なままだと、抑止力は働きません。
前述の調査で多くの企業が行為者への規制を必要と考えていることからも、ルールの明確化は取り組みの土台といえます。
研修で「どこからがハラスメントか」の認識をそろえる
ハラスメントが起きる背景には、行為者本人に自覚がないケースが少なくありません。
よくあるのが、指導のつもりで強い言葉を使い続けていた管理職が、部下から訴えられて初めて問題に気づくケースです。
こうしたすれ違いを防ぐには、どこからがハラスメントにあたるのかという認識を組織全体でそろえる必要があります。
研修は一度きりで終わらせず、管理職向けと一般社員向けに分けて定期的に実施するのが効果的です。
管理職には指導とパワハラの境界や相談を受けたときの対応を、一般社員には被害を受けた・見かけたときの行動を中心に伝えると、それぞれの立場で実践しやすくなります。
教材は自社で一から作る必要はなく、公的な資料も活用できます。
相談窓口を「実際に使われる窓口」にする
多くの企業が相談窓口を設けていますが、「設置したものの相談がほとんど来ない」という悩みはよく聞かれます。
原因として多いのが、相談したことが周囲に知られるのではないか、評価に響くのではないかという不安です。
窓口の存在を知っていても、使うハードルが高ければ声は届きません。
窓口を機能させるには、匿名で相談できる経路を用意する、社内と社外の窓口を併設する、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止を明文化するといった工夫が有効です。
相談者が安心して声を上げられる設計にすることで、深刻化する前の小さな兆候をつかみやすくなり、早期の対応にもつなげられます。
ハラスメント相談窓口について、もっと気軽に相談できる窓口にしたいというご要望は、みんばこにご相談いただく企業からも多く寄せられます。
相談のハードルを下げることは、ハラスメント防止の取り組み全体の実効性を左右する重要な要素といえます。
ハラスメントは、被害者が声を上げられないまま深刻化しがちです。組織として防ぐには、立場や評価を気にせず相談できる経路が欠かせません。匿名で声を集める仕組みは、小さな兆候に早く気づくための有効な手段の一つです。
ハラスメント防止の取り組みが形骸化する原因
制度を整えても効果が出ない職場には、共通する原因があります。原因を理解しておくことで、自社の取り組みのどこを見直すべきかが見えてきます。
「相談しても変わらない」という諦めが広がっている
過去に相談した人が不利益を受けた、あるいは相談後に何の変化もなかったという経験が社内で共有されると、「相談しても変わらない」という諦めが広がります。
一度この空気ができると、新たな被害が起きても誰も声を上げなくなり、窓口は存在していても機能しない状態に陥ってしまいます。
この悪循環を断ち切るには、相談を受けた後の対応プロセスを明確にし、可能な範囲で結果をフィードバックすることが重要です。
個別の内容は守秘しつつも、「相談を受けて職場環境の改善を行った」といった形で取り組みを可視化すると、声を上げることに意味があると従業員が実感しやすくなります。
周囲が「自分には関係ない」と傍観してしまう
ハラスメントは当事者同士だけの問題ではありません。
周囲の同僚が気づいていながら見て見ぬふりをすることで、行為がエスカレートしていくケースは少なくないと言われています。
傍観の背景には、「自分が言う立場ではない」「伝える手段がない」という思いが隠れていることが多いものです。
傍観者を減らすには、ハラスメントを見かけた第三者も相談・報告できることを明示し、その経路を用意する必要があります。
被害者本人は声を上げにくくても、周囲からの報告があれば早期に事実を把握できます。
従業員一人ひとりが職場の当事者として関われる仕組みが、防止の取り組みを支える土台になります。
取り組み事例:相談のハードルを下げて窓口への連絡が増えたケース
ここでは、匿名で声を集める仕組みを取り入れて社内体制を見直した、みんばこ導入企業(金融事業・融資・ファクタリング・集金代行事業、3,000名〜)の事例を紹介します。
導入前の課題:「悪い意味での第三者視点」
この企業では、社内の問題が外部に流出した経験をきっかけに、社内体制の整備を進めていました。
根本的な原因として捉えたのが、自分の行為が会社にどう影響するかの認識が薄い「悪い意味での第三者視点」と、問題を見ても伝える義務も手段もなく、自分には関係ないとする雰囲気でした。
これは前のセクションで触れた傍観の構造そのものです。
問題に気づいた人がいても、伝える手段がなければ声は組織に届きません。
そこで、従業員が問題を伝えやすい経路を整え、良い意味での相互監視体制を構築し、正当に勝てる組織づくりを目指して、匿名で声を集める仕組みを導入しました。
導入後の変化:連絡件数の増加と事実確認の効率化
導入から日は浅いものの、良い傾向が表れています。
電話やメールよりも投稿のハードルが下がり、窓口への連絡は大きく増えました。
担当の法務コンプライアンス 管理職は「今までは窓口への連絡も月に一件あるかないかでしたが、今では数件〜十数件連絡が来る月もあります。
」と話しています。
また、匿名のままチャットができ、ファイル添付が容易なため、事実確認に必要な証拠や信憑性を当事者や周囲が補強でき、業務の効率化にもつながっています。
同管理職は「一番良かったのが匿名のままチャットできることと、ファイル添付が容易なことです。
」と評価しており、社内では良い意味での相互監視体制への期待も生まれています。
こうした課題に組織として取り組むには、従業員が匿名で声を上げられる仕組みづくりも有効です。みんばこのようなクラウド目安箱ツールを活用することで、現場のリアルな声を早期にキャッチし、問題が深刻化する前に対処できます。
自社でハラスメント防止に取り組むための実践ポイント
取り組みを始める際は、公的な資料を活用しながら、自社の状況に合わせて段階的に進めることが現実的です。
公的なポータルサイトの事例や資料を活用する
厚生労働省が運営するハラスメント対策の総合ポータルサイト「あかるい職場応援団」では、人事担当者向けの情報や研修用資料のダウンロード、対策研修の案内などが提供されています。
自社で一から教材や規程を作るのが難しい場合でも、こうした公的な資料を土台にすれば取り組みを始めやすくなります。
同サイトでは、カスタマーハラスメント防止対策の企業事例も紹介されています。
他社がどのような体制やルールで対応しているのかを知ることは、自社の取り組みを考えるうえで大きなヒントになります。
ただし、業種や規模によって適した方法は異なるため、そのまま取り入れるのではなく自社の実情に合わせて調整することが大切です。
現場の声を定期的に集め、取り組みを改善し続ける
ハラスメント防止の取り組みは、一度整えたら終わりではありません。
組織の変化や人の入れ替わりによって、新たなリスクは生まれ続けます。
たとえば、異動や組織再編の直後には、新しい上司との関係に悩みを抱えながらも誰にも言えずにいるという状況がよく見られます。
定期的に現場の実態を把握する仕組みが必要です。
実態把握には、匿名アンケートや常設の匿名窓口を組み合わせる方法が有効です。
前述の事例のように、伝える手段を整えるだけで、それまで埋もれていた声が届くようになることがあります。
集まった声をもとに研修内容や窓口の運用を見直すサイクルを回すことで、取り組みは形骸化せず、実効性を保ち続けられます。
声を集めた後は、対応の優先順位をつけて着実に動くことが信頼につながります。
すべてにすぐ対応できなくても、受け止めたことを伝え、改善の進捗を共有するだけで従業員の受け止め方は変わります。
小さな改善の積み重ねが「この会社は声を聞いてくれる」という安心感を生み、ハラスメントが起きにくい職場をつくっていきます。
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よくある質問
Q. ハラスメント防止の取り組みは中小企業でも義務ですか?
A. はい。パワーハラスメントの防止措置は、2022年4月から中小企業も含めたすべての事業主に義務付けられています。方針の明確化と周知・啓発、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応などが求められます。また、2026年10月からはカスタマーハラスメント対策も事業主の義務となるため、規模にかかわらず早めに準備を進めておくことが重要です。
Q. ハラスメント研修はどのくらいの頻度で行えばよいですか?
A. 法令で頻度が定められているわけではありませんが、一度きりでは知識が定着しにくく、新入社員や中途入社者、新任管理職にも届きません。年に1回程度の全社研修に加え、入社時や管理職への昇格時に実施するなど、タイミングを決めて継続することが望ましいといえます。厚生労働省の「あかるい職場応援団」の資料を活用すると、準備の負担を抑えられます。
Q. 相談窓口を設置しても相談が来ません。どうすればよいですか?
A. 相談が来ない理由として多いのは、相談内容が周囲に知られる不安や、相談しても変わらないという諦めです。匿名で相談できる経路を設ける、社外窓口を併設する、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止を明示するといった対策が有効です。加えて、相談後の対応プロセスを公開し、改善の事実を可視化すると、窓口への信頼が高まりやすくなります。
Q. 匿名の相談だと事実確認が難しいのではないですか?
A. 匿名の相談は、相談者を特定できないため追加の聞き取りが難しいという課題があります。ただし、匿名のままやり取りができる仕組みや、証拠となるファイルを添付できる仕組みを使えば、相談者を守りながら事実確認を進められます。匿名だから対応できないと考えるのではなく、匿名でも確認を進められる経路を用意しておくことが重要です。
Q. ハラスメントを目撃した社員にはどう行動してもらえばよいですか?
A. 目撃した社員には、被害者に声をかける、その場で話題を変えて行為を止める、相談窓口に報告するといった行動を、研修などで具体的に伝えておくことが有効です。また、第三者からの報告も受け付けていることを明示し、報告者が不利益を受けない仕組みを整える必要があります。周囲が動ける職場では、ハラスメントの早期発見につながります。
Q. カスタマーハラスメント対策は何から始めればよいですか?
A. まずは自社のどのような顧客対応の場面で被害が起きやすいかを把握し、カスハラに対する基本方針を定めて社内外に示すことから始めるのが現実的です。そのうえで、対応マニュアルの整備、従業員向けの相談体制づくり、被害を受けた従業員のケアなどを進めます。厚生労働省のポータルサイトに掲載されている企業事例も参考になります。
まとめ
- ハラスメント相談はセクハラが減少する一方でカスハラは増加しており、対策の対象は社内外に広がっている
- パワハラ防止措置はすべての事業主の義務であり、2026年10月からはカスハラ対策も義務化される
- 効果的な取り組みには「方針の明確化」「研修による認識共有」「使われる相談窓口」の3ステップが欠かせない
- 「相談しても変わらない」という諦めや傍観者意識が、取り組みを形骸化させる主な原因になる
- 匿名で声を届けられる経路を整え、集まった声をもとに改善を続けることで、取り組みの実効性が高まる
ハラスメント防止の取り組みを実効性あるものにするには、従業員が安心して声を上げられる仕組みづくりが鍵になります。まずは自社の窓口が本当に使われているかを見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。
- 相談者が特定される不安をなくせますか?
みんばこは匿名のまま投稿でき、担当者とも匿名のままチャットでやり取りできるため、相談者が安心して声を上げられます。 - 事実確認に必要な情報は集められますか?
匿名のチャットに加えてファイル添付も簡単に行えるため、事実確認に必要な証拠を補強してもらいやすくなります。 - まずは試してから導入を検討できますか?
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