ピープルマネジメントとは?本音を引き出す実践法

「部下とはよく話せている」と感じていても、現場の受け止め方は違うかもしれません。ピープルマネジメントは、業務の進捗だけでなく一人ひとりの考えや状態に目を向けるマネジメントです。本記事では、管理職と現場のあいだに生じやすい認識ギャップをデータで確認し、埋めるための実践ポイントを解説します。職場の本音は、きちんと届いているでしょうか。

ピープルマネジメントとは?業務管理との違い

ピープルマネジメントとは、成果を生み出す「人」に焦点を当て、メンバーの成長や状態、意欲を支えるマネジメントの考え方です。業務の進捗管理と両輪で機能させることが求められます。

業務管理と人へのマネジメントの違い

従来のマネジメントは、目標設定や進捗確認、品質管理など「業務」を中心に組み立てられてきました。

一方でピープルマネジメントは、仕事を担うメンバー一人ひとりの強みや価値観、キャリアの希望、心身のコンディションに目を向け、力を発揮しやすい状態を整えることを重視します。

業務を管理するだけでは、なぜ成果が上がらないのかという背景までは見えにくいためです。

両者は対立するものではありません。

業務の進め方を整えることも、人の状態を理解することも、チームが成果を上げるうえで欠かせない要素です。

ただし、業務面の指標は数字で見えやすい一方、メンバーの不安や不満、改善のアイデアは表に出てこないと把握できません。

見えにくいものを意識的に拾いにいく姿勢が、ピープルマネジメントの出発点になります。

具体的な取り組みとしては、定期的な1on1ミーティング、日常的なフィードバックや承認、キャリアについての対話、業務負荷やコンディションの把握などが挙げられます。

いずれも特別な制度を新たにつくることより、普段のコミュニケーションの質を高めることに主眼があります。

形だけ導入しても、メンバーが本音を話せなければ効果は限られる点に注意が必要です。

仕事だけでなく「人」を見るのがピープルマネジメント

ピープルマネジメントが求められる背景

働き方や価値観が多様になり、同じ指示や同じ動機づけが全員に通用する時代ではなくなりました。

テレワークやハイブリッド勤務の広がりで、相手の様子を目で見て察する機会も減っています。

こうした環境では、管理職が意識的に一人ひとりと向き合わなければ、メンバーの意欲の低下や不調のサインに気づくのが遅れてしまいます。

管理職自身も、この難しさを実感しています。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ『マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2024年』(2024年)では、管理職が難しさを感じることの1位は「メンバーの仕事に向けたやる気を高めること」で、56.0%でした(人事担当者150名・管理職150名が対象)。

やる気を高めることが難しいと感じる背景には、メンバーが何に意欲を感じ、何に不満を抱えているのかが見えにくいという事情があると考えられます。

相手の考えがわからないまま励ましても、的外れになりやすいものです。

だからこそ、ピープルマネジメントの土台として「メンバーの本音を正しく知ること」が重要になります。

次の章では、その前提が揺らいでいる実態を見ていきます。

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管理職が陥りやすい「本音を聞けている」という思い込み

管理職が「部下は本音を話してくれている」と感じていても、部下側の実感はそれを下回っている可能性があります。この認識ギャップに気づくことが、ピープルマネジメントを見直す第一歩です。

管理職の推定と部下の実感にはズレがある

組織開発コンサルティング企業による株式会社スコラ・コンサルト『組織に関するアンケート調査』(2024年)では、従業員100名以上の企業に勤める5,161名を対象に、職場で本音を話せているかを尋ねています。

チーム会議で「本音で話せている」と答えた一般社員は48.3%でしたが、管理職が推定した部下の割合は67.7%で、19.4ポイントの差がありました。

上司との面談でも同様の傾向が見られ、一般社員の回答は55.6%、管理職の推定は70.0%と14.4ポイントの差がありました(いずれも「はい」「ややはい」の合計)。

つまり、管理職は自分が思っているほど部下の本音を聞けていない可能性があります。

悪意があるわけではなく、会議や面談で目立った反論が出ないことを「本音を話してくれている」と受け取ってしまいやすいのです。

この思い込みが厄介なのは、管理職が「問題はない」と判断すると、改善の必要性そのものが見過ごされてしまう点です。

部下の側は言いたいことを抱えたまま様子を見ており、管理職の側はコミュニケーションが取れていると感じている。

両者の認識がずれたままでは、どれだけ丁寧に面談を重ねても、本当の課題には近づけません。

管理職の実感ほど、部下は本音を話せていない

役職が上がるほど本音は見えにくくなる

役職による感じ方の違いを示すデータもあります。

株式会社パーソル総合研究所『職場の対話に関する定量調査(報告書)』(2024年)では、正規雇用就業者6,000人に、自分の会話のうち本音の割合を尋ねています(自己申告)。

一般社員は24.0%、課長は29.7%、部長は35.5%、事業部長は39.2%と、役職が上がるほど本音の割合が高くなる傾向がありました。

立場が上の人ほど、自分は率直に話せていると感じやすく、職場全体も同じように本音が交わされていると考えやすくなります。

しかし部下の立場から見ると、評価や人事に影響を与える相手に対して、懸念や異論をそのまま伝えるのは簡単ではありません。

役職差そのものが、発言の心理的なハードルになりやすいのです。

この構造を踏まえると、管理職の努力だけで認識ギャップを完全に埋めるのは難しいといえます。

どれほど話しやすい上司を目指しても、「上司に直接伝える」という経路しかなければ、言いにくい内容は届きにくいままです。

直接の対話を大切にしながら、役職を越えて声が届く別の経路を組み合わせる発想が求められます。

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組織として現場の本音を拾いたい方へ

管理職と現場の認識ギャップは、個人の努力だけでは埋めにくいものです。役職を越えて声が届く匿名の経路を組織として用意しておくと、直接は言いにくい改善提案や困りごとに早めに気づきやすくなります。

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部下が上司に「言いにくい」ことと放置のリスク

部下が言いにくいと感じる内容には、職場をよくするための提案や、自分の不調に関わる相談が含まれます。こうした声が届かない状態は、組織にとって見過ごせないリスクになります。

改善提案や不調の相談ほど言い出しにくい

民間事業者によるProfessional Studio株式会社『上司への本音調査』(2026年)では、全国20〜49歳の正社員262人のうち70.4%が、直属の上司への報告・相談で「言いにくさ」を経験していました。

最も言いにくい内容は「会社方針・ルールへの改善提案」(22.8%)で、「健康・メンタル不調」(21.8%)、「業務量・残業の相談」(20.1%)が続いています。

回答者数が262人と比較的小規模な調査ではあるものの、示唆に富む結果です。

改善提案は職場をよくするための前向きな声であり、不調や業務量の相談は早めに対応すべき重要な情報です。

ところが、こうした声ほど「上司の方針を否定していると思われないか」「弱音と受け取られないか」という不安から、胸の内にしまわれやすいと考えられます。

たとえば、現場から改善提案がほとんど上がってこない職場では、管理職が「現状に満足している」と受け止めている一方、メンバーは「言っても変わらない」「言うと面倒なことになる」と感じているという状況がよく見られます。

表面上は穏やかでも、その裏で小さな不満や疲れが積み重なっているかもしれません。

沈黙は必ずしも満足を意味しないという前提で、職場を見直すことが大切です。

届きにくいのは、組織にとって重要な声

声が届かない状態が続くとどうなるか

言いにくさが放置されると、まず改善の機会が失われます。

現場で気づいた非効率や顧客の変化、ルールの不備といった情報が上がってこなければ、管理職や経営層は実態とずれた前提で判断を続けることになります。

結果として、現場の負担が増える方針が決まったり、手遅れになってから問題が表面化したりする事態を招きかねません。

次に、メンバーの心身の不調に気づくのが遅れます。

業務量や体調に関する相談をためらっているうちに状態が悪化し、休職や退職といった形で初めて問題が明らかになるケースもあります。

不調のサインを早期に把握することは、本人を守るだけでなく、チームの業務継続の観点からも欠かせません。

一人の不在が周囲の負担を増やし、さらに不調者を生む悪循環も避けたいところです。

さらに、「言っても無駄だ」という感覚が職場に広がると、意見を出すこと自体が控えられるようになります。

不満は表で語られず、陰口や噂として流れやすくなり、上司と部下の信頼関係も損なわれていきます。

こうした悪循環を断つには、声を上げやすい環境を意図的に整え、上がってきた声に応える経験を積み重ねることが必要です。

部下の不満を解消するための方法5選

ピープルマネジメントを機能させる実践のポイント

認識ギャップを前提に、管理職ができることは「聞き方」と「応え方」を変えることです。日々の対話の質を高める工夫を、無理のない範囲で取り入れていきましょう。

1on1は「聞く場」として設計する

よくあるのが、1on1の時間の大半が業務の進捗確認や指示に使われ、部下が話したいことを話せないまま終わるケースです。

1on1は部下のための時間と位置づけ、話題の主導権を部下に渡すことが基本です。

上司は評価や助言を急がず、まずは相手の話を最後まで聞く姿勢を意識しましょう。

沈黙があっても、すぐに埋めようとせず待つことも大切です。

問いかけ方も重要です。

「何か問題はありますか」と聞くと、部下は「特にありません」と答えやすくなります。

「最近、手間がかかっていると感じる作業はありますか」「もし一つルールを変えられるとしたら何を変えたいですか」のように、具体的で答えやすい問いを用意すると、本音に近い話が出やすくなります。

答えにくい質問を重ねるより、話しやすい入口を用意する意識を持ちましょう。

そして、話してくれた内容への対応を必ず示すことが欠かせません。

すぐに実現できない提案であっても、検討した結果や実現が難しい理由を伝えれば、部下は「聞いてもらえた」と感じられます。

反対に、話した内容が放置されると、次の1on1では当たり障りのない話しかしなくなります。

聞いたあとの行動こそが、次の本音を引き出す鍵になります。

話させるより、話しても大丈夫と思える場をつくる

承認とフィードバックを日常に組み込む

ピープルマネジメントでは、評価面談のような節目だけでなく、日常の中でこまめにフィードバックや承認を伝えることが大切です。

成果が出たときだけでなく、工夫や努力のプロセスに目を向けて言葉にすることで、メンバーは「見てもらえている」という安心感を持てます。

この安心感が、言いにくいことを相談できる関係の土台になります。

フィードバックは、相手の人格ではなく具体的な行動や事実に焦点を当てて伝えるのが基本です。

「もっと積極的に」といった抽象的な表現は受け手によって解釈が分かれ、指示のわかりにくさにつながります。

何がよかったのか、次に何を変えるとよいのかを具体的に伝えることで、メンバーは行動に移しやすくなり、上司への信頼も深まります。

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管理職ひとりに頼らない、組織としての仕組みづくり

ピープルマネジメントの質を管理職個人の力量だけに委ねると、どうしても限界があります。組織として、役職を越えて声が届く仕組みと、管理職を支える体制を整えることが重要です。

役職を越えて届く匿名の経路を用意する

上司に直接伝えにくい内容を拾うためには、対面の対話とは別に、匿名で意見を出せる経路を用意することが有効です。

匿名であれば、発言者が特定される不安や評価への影響を気にせず、改善提案や業務上の困りごと、不調の兆しなどを伝えやすくなります。

社内アンケートや目安箱、相談窓口など、形はさまざまです。

匿名の経路は、管理職と部下の対話を置き換えるものではありません。

むしろ、匿名で寄せられた声をきっかけに職場全体の課題に気づき、1on1やチームミーティングで掘り下げるといった使い方に価値があります。

直接の対話で拾える声と、匿名だからこそ届く声を組み合わせることで、管理職の認識と現場の実態のズレを小さくしていけます。

運用で大切なのは、寄せられた声への対応を見える形で返すことです。

すべての意見を採用する必要はありませんが、受け取ったこと、検討した内容、対応の方針を共有すれば、「声を上げれば届く」という実感が職場に広がります。

投稿がなくなる、批判ばかりが集まるといった状態を防ぐためにも、返信や結果の共有を継続する体制を整えておきましょう。

直接の対話と匿名の経路を組み合わせて本音を拾う

管理職を孤立させない支援体制を整える

ピープルマネジメントの重要性が高まるほど、管理職の負担は増えていきます。

プレイヤーとしての業務を抱えながら、一人ひとりとの対話や育成、コンディション把握まで担うのは容易ではありません。

管理職がすべてを抱え込むと、本人が疲弊し、結果としてメンバーへの関わりも手薄になるという悪循環に陥りかねません。

人事部門や経営層は、管理職向けの研修で傾聴やフィードバックの方法を学ぶ機会を設けるとともに、管理職同士が悩みを共有できる場をつくることが望まれます。

また、組織全体の声を集約して管理職にフィードバックすれば、自分のチームの状態を客観的に捉える手がかりになります。

管理職もまた、支えられる側の一人であるという視点が欠かせません。

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よくある質問

Q. ピープルマネジメントとタレントマネジメントの違いは何ですか?

A. タレントマネジメントは、従業員のスキルや経験、評価などの情報を把握し、採用・配置・育成・登用といった人事施策に組織的に活かす取り組みを指すことが一般的です。一方、ピープルマネジメントは、管理職が日々の関わりを通じてメンバーの成長や意欲、コンディションを支える考え方です。前者は人事制度や仕組みの側面、後者は現場での関わり方の側面が強く、両者を連動させることで効果が高まります。

Q. 1on1をしても部下が本音を話してくれません。どうすればよいですか?

A. まずは1on1を業務報告の場ではなく、部下が話したいことを話す場として位置づけ直すことが大切です。そのうえで、抽象的な質問ではなく具体的で答えやすい問いを用意し、評価や助言を急がずに最後まで聞く姿勢を意識しましょう。また、過去に話してくれた内容への対応を示すことも欠かせません。それでも直接は言いにくい内容があることを前提に、匿名で意見を出せる経路を併用するのも一つの方法です。

Q. プレイングマネージャーで時間が取れない場合、何から始めればよいですか?

A. すべてを一度に始める必要はありません。まずは短い時間でもよいので、定期的に一人ひとりと話す時間を確保することから始めるのがおすすめです。日常の業務の中で、気づいた工夫や努力をその場で言葉にして伝えるだけでも、関係性は変わっていきます。また、管理職ひとりで抱え込まず、人事部門に研修や仕組みの整備を相談したり、匿名アンケートなどで職場全体の状態を把握したりすることで、限られた時間でも効果的に関われるようになります。

Q. 匿名で意見を集めると、批判や不満ばかりが集まりませんか?

A. 匿名の経路を設けると、これまで表に出にくかった不満が寄せられることはあります。ただし、不満の裏には「こうなってほしい」という改善の期待が隠れていることがあり、職場の課題を知る貴重な手がかりになります。運用の目的を「職場をよくするための意見を集めること」と明確に伝え、寄せられた声に誠実に応答を続けることで、建設的な提案が増えやすくなります。特定の個人を攻撃する投稿への対応ルールを事前に決めておくことも大切です。

Q. ピープルマネジメントの成果はどのように測ればよいですか?

A. 成果は売上のような短期的な数字には表れにくいため、複数の観点で継続的に確認することが大切です。たとえば、定期的なエンゲージメントサーベイや職場アンケートの結果の推移、1on1の実施状況、離職や休職の状況の変化、改善提案の件数などが参考になります。数値だけでなく、メンバーから寄せられる声の内容がどう変わったかにも目を向けると、職場の変化を立体的に捉えられます。

Q. 人事部門はピープルマネジメントにどのように関わるべきですか?

A. 人事部門の役割は、管理職が無理なくピープルマネジメントに取り組めるよう環境を整えることです。具体的には、傾聴やフィードバックなどのスキルを学ぶ研修の提供、1on1のガイドライン作成、管理職同士の情報交換の場づくりなどが挙げられます。さらに、組織全体の声を匿名で集めて分析し、各部署の状態を管理職に共有すれば、現場との認識ギャップに気づくきっかけを提供できます。

まとめ

この記事のポイント
  • ピープルマネジメントは、業務だけでなくメンバー一人ひとりの強みや意欲、コンディションに目を向けるマネジメントです。
  • 管理職が推定する「部下が本音を話せている割合」は、部下自身の実感を上回る傾向があり、認識ギャップが生じやすくなっています。
  • 改善提案や不調の相談など、組織にとって重要な声ほど上司に直接伝えにくく、放置すると改善機会の損失や不調の深刻化につながります。
  • 1on1を「聞く場」として設計し、具体的な問いと対応のフィードバックを重ねることが、本音を引き出す土台になります。
  • 管理職個人に頼らず、役職を越えて届く匿名の経路や管理職を支える体制を、組織として整えることが重要です。

現場の本音を把握することは、ピープルマネジメントのすべての出発点です。直接の対話を大切にしながら、役職を越えて声が届く仕組みも検討してみてはいかがでしょうか。

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  • 上司に直接言いにくい改善提案も集められますか?
    みんばこは匿名で投稿できる目安箱サービスのため、発言者が特定される不安を抑えながら、改善提案や業務上の困りごとを集められます。
  • 集めた声はピープルマネジメントにどう活かせますか?
    寄せられた声を確認して対応を検討し、その結果を職場に共有することで、管理職が気づきにくい課題を把握し、「声を上げれば届く」という実感を広げるきっかけになります。
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参考・引用