注意しても行動が改まらない、周囲とのトラブルが絶えない。いわゆる「問題社員」への対応に頭を抱えていませんか。感情的に叱れば指導の正当性が揺らぎ、放置すれば周囲の不満や離職につながります。本記事では、法的な前提を押さえたうえで、事実確認から面談、段階的な措置、問題を早く把握する仕組みづくりまでを順に解説します。
問題社員への対応は「人」ではなく「行動」を捉えることから始まります。放置すれば本人だけでなく、周囲の社員の意欲や定着にも影響が及びます。
「問題社員」の主なタイプと捉え方
一般に「問題社員」と呼ばれるのは、遅刻や無断欠勤を繰り返す、業務上の指示に従わない、同僚への威圧的な言動が目立つ、求められる水準の成果を継続して出せない、といった行動が見られる社員です。
ただし、タイプは一様ではありません。
勤怠・能力・協調性・規律のどこに課題があるかによって、取るべき対応は大きく変わります。
注意したいのは、「問題社員」という言葉がレッテルとして独り歩きしやすい点です。
人格や性格を問題視すると、指導は感情的になり、本人も防衛的になって改善が遠のきます。
また、背景に業務量の偏りや心身の不調、上司との相性など、本人だけでは解決できない要因が潜んでいることも少なくありません。
そのため、対応の出発点は「どの行動が、どの規程や期待水準に照らして問題なのか」を言葉にすることです。
行動として特定できれば、事実の記録や改善目標の設定ができ、本人とも同じ土台で話し合えます。
客観的な行動に焦点を当てる姿勢は、後述する法的リスクを避けるうえでも欠かせません。
レッテルではなく、具体的な行動を問題として扱う
放置が周囲の離職と沈黙を招く理由
問題行動を見て見ぬふりをすると、そのしわ寄せは周囲の社員に向かいます。
フォローのための残業が増え、理不尽な言動に耐える日々が続けば、「この職場では何を言っても変わらない」という諦めが広がります。
こうした諦めは表に出にくく、管理職が気づいたときには、優秀な社員ほど静かに職場を去っているという事態になりかねません。
エン・ジャパン『「本当の退職理由」調査』(2024年)(求人サービス「エンゲージ」を提供する事業者による調査)では、退職経験者の54%が会社に伝えなかった本当の退職理由があると回答し、本当の退職理由の最多は「人間関係が悪い」(46%、複数回答)でした。
求人サービス利用者が対象である点には留意が必要ですが、人間関係の不満が表に出ないまま退職に至る構図がうかがえます。
みんばこの運営を通じた実感としても、小さな困りごとに見えることが、従業員にとっては業務の大きな妨げや心理的な負担になっていることが多くあります。
特定の社員の言動に周囲が振り回されている状態は、管理職からは「よくある摩擦」に見えても、当事者にとっては深刻な問題です。
早めに実態を把握し、対応に着手することが組織を守ります。
対応前に押さえたい法的な前提
問題社員への対応では、解雇が厳しく制限されていることと、指導がハラスメントと受け取られないための線引きを理解しておく必要があります。
解雇は簡単には認められない
問題行動が続くと「辞めてもらうしかない」と考えがちですが、日本の法制度では解雇は厳しく制限されています。
厚生労働省「労働基準法に関するQ&A(解雇)」でも示されているとおり、労働契約法第16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利の濫用として無効になると定めています。
厚生労働省が公表した「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」をまとめた解説記事によると、相談件数では「いじめ・嫌がらせ」が、あっせんの申請件数では「解雇」が最多となっています。
十分な指導や改善の機会を経ないまま解雇に踏み切れば、紛争に発展し、組織として大きな負担を抱えるおそれがあります。
解雇の合理性や相当性を説明するには、問題行動の事実に加えて、会社が注意・指導を重ね、改善の機会を与えてきた経緯を示せることが重要になります。
だからこそ、日々の指導と記録の積み重ねが、組織と本人の双方を守る土台になります。
判断に迷う場合は、早い段階で社会保険労務士や弁護士に相談することも検討が必要です。
解雇は最終手段。指導は業務上の必要性を軸に
指導とハラスメントの境界を意識する
もう一つの落とし穴が、指導のつもりの言動がハラスメントと受け止められるケースです。
大勢の前で叱責する、人格を否定する言葉を使う、必要以上に長時間問い詰めるといった対応は、たとえ相手に非があっても、指導の正当性を損ないます。
そうなれば、問題社員の側から逆に申し立てを受け、対応が一気に難しくなります。
一方で、ハラスメントを恐れて注意そのものを避けるのも問題です。
指導を放棄すれば問題行動は続き、周囲の不満が蓄積します。
判断の軸になるのは、その指導が業務上必要なものか、そして方法が相当な範囲に収まっているかという点です。
伝える内容を具体的な行動と業務への影響に絞れば、厳しい内容であっても人格攻撃にはなりにくくなります。
問題社員への対応は、上司個人の努力だけでは限界があります。周囲が感じている違和感や困りごとを早めに把握できれば、深刻化する前に手を打てます。立場を気にせず声を届けられる匿名の窓口は、その入口として有効な選択肢です。
問題社員への対応ステップ:事実確認から段階的措置まで
対応は「事実確認と記録」「面談による改善の要請」「段階的な措置」の順に進めます。手順を飛ばさないことが、公正さと法的な安全性の両方を支えます。
ステップ1:事実を確認し、記録に残す
最初に行うのは、問題とされる行動を客観的な事実として整理することです。
いつ、どこで、誰に対して、どのような言動があり、業務にどんな影響が出たのかを、日時とともに記録します。
「態度が悪い」「やる気がない」といった印象ではなく、遅刻の日時や提出期限の超過、発言の具体的な内容など、第三者が読んでも同じ状況を思い描ける書き方を心がけます。
周囲の社員から話を聞く場合は、誘導的な質問を避け、見聞きした事実をそのまま語ってもらいます。
聞き取った内容は、話してくれた社員が不利益を受けないよう慎重に管理しなければなりません。
協力したことが本人に伝われば職場の関係が悪化し、次からは誰も声を上げなくなるためです。
情報の扱い方は事前に決めておくことが大切です。
記録→面談→段階的措置の順を崩さない
ステップ2:面談で行動の改善を具体的に求める
記録が揃ったら、本人と面談を行います。
冒頭で面談の目的を伝え、記録した事実をもとに「どの行動が、なぜ問題なのか」を具体的に説明します。
そのうえで、本人の言い分や事情にも耳を傾けます。
一方的に話すだけの面談では納得が得られず、背景にある業務上の困りごとや体調の問題を見落とすおそれがあるからです。
面談の終わりには、改善してほしい行動、期待する水準、振り返りの時期を明確にし、双方で確認します。
口頭の約束だけでは後から認識の食い違いが起きやすいため、合意内容は書面やメールで残すのが望ましい方法です。
重要な面談では人事担当者などの第三者に同席してもらうと、やり取りの透明性が高まり、上司と本人の双方を守ることにつながります。
ステップ3:改善が見られない場合の段階的な措置
振り返りの時期に改善が確認できない場合は、注意の内容を文書で交付し、改めて改善を求めます。
それでも状況が変わらなければ、配置転換による環境の見直しや、就業規則に基づく懲戒処分を検討します。
懲戒処分には就業規則上の根拠が必要であり、行為の内容と処分の重さが釣り合っているかを慎重に見極めなければなりません。
退職勧奨を行う場合も、あくまで本人の自由な意思による判断を前提とし、執拗に繰り返したり、退職しなければ不利益があるかのように示したりしてはいけません。
解雇は、こうした段階を尽くしてもなお改善が見込めない場合の最終手段です。
各段階で判断に迷ったら、人事部門や社会保険労務士、弁護士など専門家と連携しながら進めることが安全です。
早期発見には周囲の声を拾う仕組みが欠かせない
問題社員への対応が遅れる大きな原因は、周囲の社員が困っていても管理職に声が届かないことです。声を上げやすい経路を整えることが、早期の発見と対応につながります。
周囲の社員が問題を報告しない理由
同僚の問題行動に困っていても、それを上司に伝えるのは簡単ではありません。
パーソル総合研究所『職場の対話に関する定量調査(報告書)』(2024年)は、本音を抑える6つのリスクのうち、真剣に受け止めてもらえない・言っても何にもならないと感じる「無関心リスク」が強いほど、社内で本音を話さなくなる傾向があると分析しています。
また、パーソル総合研究所『職場の対話に関する定量調査』(2024年)では、全国の正規雇用就業者6,000人のうち、職場で本音を話せる相手が「1人もいない」と答えた人が50.8%でした。
問題社員の言動に悩んでいても、相談できる相手がいなければ、その声は管理職まで届きません。
さらに、告げ口と思われたくない、同僚との関係を壊したくないという心理も働きます。
過去に問題を報告しても何も変わらなかった経験があれば、次は黙っているほうが得策だと考えるのは自然なことです。
その結果、管理職が「特に問題は聞いていない」と感じている職場ほど、実際には困りごとが水面下に埋もれている可能性があります。
声が届かない職場では、問題の発見が遅れる
匿名の窓口を早期発見の入口にする
こうした心理的なハードルを下げる方法の一つが、匿名で意見や相談を寄せられる窓口です。
名前を出さずに済めば、告げ口と見られる不安や関係悪化への懸念が和らぎ、困りごとを打ち明けやすくなると考えられます。
対面の面談やチーム会議とは別に、立場や人間関係を気にせず声を届けられる経路があることが、問題の早期把握につながります。
ただし、匿名の情報はそれだけで事実と断定できるものではありません。
寄せられた内容は、事実確認を始めるきっかけとして扱い、前述のステップに沿って客観的に確認していく姿勢が欠かせません。
また、受け取った声に誠実に応答し、対応の進み具合を可能な範囲で伝えることで、「言っても無駄」という諦めを防ぎ、窓口が信頼される存在になっていきます。
管理職を孤立させない体制づくり
問題社員への対応は、現場の管理職だけに抱え込ませると長期化しがちです。人事・経営と連携し、相談できる体制を整えることが再発防止にもつながります。
対応を組織のルールとして共有する
問題社員への対応が属人的になると、管理職によって注意の基準がばらつき、「あの上司は甘い」「自分だけ厳しく扱われた」といった不公平感が生まれます。
また、対応を任された管理職自身が強いストレスを抱え込み、本来の業務に支障をきたすことも珍しくありません。
現場任せにせず、組織として対応の流れを定めておくことが重要です。
具体的には、記録の様式、面談の進め方、人事部門へ相談するタイミング、懲戒処分を検討する際の手続きなどを、あらかじめ整理して共有しておきます。
管理職向けに指導とハラスメントの違いを学ぶ研修を行うことも有効です。
管理職自身が迷いや不安を相談できる窓口を用意すれば、判断の誤りや対応の遅れを防ぎやすくなります。
対応を個人の力量に任せず、組織で支える
こんな場面で役立ちます
ここでは、みんばこでの利用イメージとして、デモ環境で作成したやり取り例を紹介します(実在の企業・利用者の事例ではありません)。
チームリーダーである投稿者が、成績が伸び悩む部下をどこまで厳しく指導してよいのか、ハラスメントを意識するあまり言葉選びに神経質になっていると、ハラスメント窓口に相談する場面です。
管理者は、指導を避ける「指導放棄」になっては本末転倒だとしたうえで、業務上の必要性と相手の成長という目的を軸に、人格ではなく行動に焦点を当てるよう助言します。
投稿者が部下が感情的になった場合の不安を補足すると、その場で論争せず時間を置くことや、重要な指導では第三者の同席が透明性の確保に役立つことを伝えています。
匿名で声を集める仕組みをツールで整える場合の選び方は、社内目安箱ツール比較5選で詳しく紹介しています。
よくある質問
Q. 問題社員をすぐに解雇することはできますか?
A. 原則として難しいと考えるべきです。労働契約法第16条により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効とされます。問題行動があったとしても、注意・指導や改善の機会を与えた経緯がなければ、解雇の相当性を説明するのは困難です。重大な規律違反のような深刻な事案であっても、事実確認と手続きを丁寧に行い、事前に社会保険労務士や弁護士へ相談することをおすすめします。
Q. 注意したら「パワハラだ」と言われました。どうすればよいですか?
A. まずは自身の言動を振り返り、業務上必要な指導だったか、方法が相当な範囲に収まっていたかを確認します。大勢の前での叱責や人格を否定する発言がなかったかがポイントです。そのうえで、指導の内容と経緯を記録とともに人事部門へ共有し、必要に応じて第三者を交えて話し合います。申し立てを恐れて指導をやめてしまうと問題行動が続くため、伝え方を見直しながら指導自体は継続することが大切です。
Q. 問題行動の記録はどの程度細かく残すべきですか?
A. 日時、場所、関係者、具体的な言動、業務への影響を、第三者が読んでも状況を再現できる程度に残すのが目安です。「態度が悪かった」のような評価ではなく、発言内容や遅刻した時刻など客観的な事実を書きます。あわせて、いつ、誰が、どのような注意や指導を行い、本人がどう反応したかも記録しておきます。後からまとめて書き足すと信頼性が下がるため、出来事があった都度、速やかに残すことが重要です。
Q. 周囲からの苦情を本人が否定した場合はどうすればよいですか?
A. 本人の主張を頭ごなしに否定せず、まずは言い分を丁寧に聞き取ります。そのうえで、複数の関係者から誘導のない形で事実を確認し、記録や業務上のデータなど客観的な資料と照らし合わせます。主張が食い違う場合も、確認できた事実の範囲で判断し、推測で結論を出さないことが大切です。証言した社員が特定されて不利益を受けないよう、情報の取り扱いには十分に注意する必要があります。
Q. 問題行動の背景にメンタル不調がありそうな場合はどう対応しますか?
A. 遅刻や欠勤の増加、集中力の低下などの背景に、心身の不調が隠れていることもあります。その可能性がある場合は、問題行動を責める前に、本人の体調や困りごとを確認する場を設けることが望ましい対応です。産業医や保健スタッフがいれば連携し、必要に応じて受診を勧めます。不調への配慮と業務上の指導は切り分けて考え、専門家の意見を踏まえながら、業務量や働き方の調整を検討します。
Q. 匿名で寄せられた問題社員に関する情報はどう扱えばよいですか?
A. 匿名の情報は、それだけで事実と断定せず、事実確認を始めるきっかけとして扱います。内容を整理し、記録や関係者への聞き取りを通じて客観的に確認したうえで対応を判断します。投稿者を特定しようとする行為は、窓口への信頼を失わせ、声が集まらなくなる原因になるため避けるべきです。対応の進み具合を可能な範囲で伝え、寄せられた声が受け止められていることを示すことも大切です。
まとめ
- 問題社員への対応は、人格ではなく具体的な行動を問題として捉えることから始める
- 解雇は労働契約法第16条により厳しく制限されており、指導と改善の機会を重ねることが前提になる
- 事実の記録、面談による改善の要請、段階的な措置の順で、手順を飛ばさずに進める
- 周囲の社員が声を上げにくい職場では問題の発見が遅れるため、匿名で声を届けられる経路が有効
- 対応を管理職個人に任せず、ルールの共有や相談体制の整備によって組織で支える
問題社員への対応を早めに始めるには、現場の困りごとを把握できる仕組みが欠かせません。周囲の声を拾う手段の一つとして、匿名で意見や相談を集められるツールも選択肢になります。
みんばこは社員の普段は言えないホンネを匿名で届けるクラウド目安箱サービスです。
- 完全匿名で投稿・返信が可能。誰が書いたかは管理者にもわかりません。
- 投稿後も双方向チャットで匿名のまま継続的にやり取りできます。
- スマートフォン・PCどこからでもアクセス可能。導入もかんたんです。
みんばこが2026年1月に、一定期間以上利用を継続している導入企業120社を対象に実施した導入効果アンケートでは、92.5%が「意見収集において匿名の効果を明確に感じている」と回答しています(継続利用企業のみを対象とした回答で、導入した企業すべてに同じ効果が出ることを示すものではありません)。
- 同僚の問題行動について、社員は匿名で相談できますか?
みんばこでは、投稿者が名前を出さずに意見や相談を投稿できます。管理者はコメントで返信してやり取りできるため、状況を確認しながら事実確認につなげられます。 - ハラスメントの相談と業務改善の意見を分けて受け付けられますか?
投稿カテゴリを設定できるため、「ハラスメント窓口」のように目的別の窓口を用意して声を受け付けられます。 - 導入前に使い勝手を試せますか?
7日間の無料トライアルを用意しています。実際の画面で投稿や返信の流れを確認したうえで、導入を検討できます。


