最低限の仕事はこなしているのに、提案も挑戦もなくなった。そんな部下の姿に心当たりはないでしょうか。「静かな退職」と呼ばれるこの状態は、表面上は問題がないぶん見過ごされがちです。気づいたときには、組織の活力が失われていることもあります。本記事では、静かな退職が起きる原因と放置するリスクを整理し、管理職や人事が取り組める具体的な対策を解説します。
静かな退職とは、会社に在籍したまま、仕事への熱意や主体的な関わりを手放している状態です。日本では仕事に熱意を持つ人の割合が国際的に見て低く、多くの職場に共通する課題になっています。
静かな退職の意味と「怠慢」との違い
静かな退職(Quiet Quitting)とは、会社を辞めるわけではないものの、決められた業務以上のことはしない働き方を指す言葉です。
2022年ごろに米国のSNSで広がり、日本でも注目されるようになったと言われています。
定時で帰る、頼まれた仕事を期限内に終えるといった行動そのものには、何の問題もありません。
問題になるのは、その背景に「どうせ頑張っても報われない」「言っても変わらない」という諦めがある場合です。
この状態が続くと、改善提案や周囲への協力のように、職務記述書には書かれていない貢献が少しずつ消えていきます。
単なる怠慢として叱ると、本人の諦めをかえって強めるおそれがあります。
対策を考える前に、背景にある感情を理解する姿勢が欠かせません。
2022年ごろに米国のSNSで広がり、日本でも注目されるようになったと言われています。
データで見る日本の現状
米ギャラップ社の調査では、日本で仕事に熱意を持って取り組む「エンゲージメントの高い従業員」の割合は5%でした。
この数字は調査対象国の中で最低水準と報じられています。
翌年の調査でも6%にとどまり、世界最低レベルが続きました。
熱意ある社員がごく一部しかいないという現実は、静かな退職が特別な現象ではないことを物語っています。
マイナビキャリアリサーチLabの「正社員の静かな退職に関する調査2025年」でも、正社員の4割を超える人が静かな退職をしていると回答しています。
必要最低限の業務だけを行う働き方は、決して少数派ではありません。
一部の社員の問題として片づけるのではなく、組織全体で向き合うべきテーマになりつつあります。
パーソル総合研究所も、「静かな退職」に企業がどう向き合い、適応するかをテーマにしたコラムを公開しています。
静かな退職を個人の意欲の問題で終わらせず、組織側の向き合い方が問われる経営課題として捉える。
こうした認識が、人事や経営の現場で広がりつつあります。
静かな退職が起きる主な原因
静かな退職の多くは、本人の性格よりも「頑張りが報われない」「声が届かない」という職場での経験が積み重なって生まれます。原因を見誤ると、対策は空回りしてしまいます。
評価や処遇に納得できない
静かな退職の背景としてよく挙げられるのが、評価や処遇への納得感の低さです。
成果を出しても評価に反映されない、評価基準が曖昧で上司の印象に左右される。
こうした状況が続くと、社員は「必要以上に頑張るのは損だ」と合理的に判断するようになります。
これは怠けではなく、環境に適応した結果と見ることもできます。
特に、業務や責任が増えても待遇が変わらない場合、主体的な行動は「割に合わない負担」とみなされやすくなります。
放置すれば、意欲の高い社員ほど先に疲弊し、同じように線を引く働き方へ移っていきます。
評価制度そのものの見直しに加えて、なぜその評価になったのかを丁寧に伝えるプロセスが重要です。
成果を出しても評価に反映されない、評価基準が曖昧で上司の印象に左右される。
「声を上げても変わらない」という学習
もう一つの大きな原因は、意見や提案をしても何も変わらなかったという経験です。
会議で出した改善案が検討されなかった、不満を伝えたら面倒な人と見られた。
こうした体験が重なると、社員は発言すること自体をやめてしまいます。
よくあるのが、会議では誰も発言しないのに、後から不満だけが聞こえてくるケースです。
これは心理的安全性が低い職場で起こりやすい現象です。
上司や周囲の反応を恐れて本音を言えないと、問題は表に出ないまま、意欲だけが静かに失われていきます。
組織に必要なのは、発言のリスクを下げ、出てきた声に何らかの反応を返す仕組みを整えることです。
声が届く実感こそが、関与を取り戻すきっかけになります。
みんばこにご相談いただく企業の中には、「言っても変わらない」という雰囲気が社内にあると話す企業もあります。
社員の発言意欲を左右しているのは、不満の中身だけではありません。
過去の声がどう扱われたかも、大きく影響していると考えられます。
静かな退職を放置するリスク
静かな退職は目立ったトラブルを起こさないため、後回しにされがちです。しかし放置すれば、生産性の低下や離職につながります。見えにくいからこそ、早い段階で把握することが重要です。
生産性の低下と周囲への波及
静かな退職の状態にある社員も、与えられた業務はこなします。
そのため短期的には、成果の落ち込みが見えにくいのが特徴です。
しかし、業務改善の提案や後輩のフォロー、部署間の調整といった「誰かがやらなければならない仕事」は手薄になります。
その結果、組織全体の生産性はじわじわと低下していきます。
影響は周囲にも広がります。
一部の社員が線を引くと、その分の負担は意欲のある社員に集中しやすくなります。
負担の偏りに不公平感を抱いた社員まで最低限の働き方を選ぶようになれば、職場全体の空気が変わってしまいます。
静かな退職は個人の問題ではなく、連鎖しやすい組織の問題として捉える必要があります。
そのため短期的には、成果の落ち込みが見えにくいのが特徴です。
兆候が見えないまま突然の離職へ
静かな退職は、実際の退職の前段階になっていることも少なくないと言われています。
日々の業務に問題がないので上司は安心していたのに、ある日突然退職の申し出を受ける。
そうした状況はよく見られます。
本人の中では、長い時間をかけて気持ちがすでに離れていたというケースです。
厄介なのは、退職を決めた後の面談では本音が語られにくいことです。
円満に辞めたいという心理から「キャリアアップのため」といった無難な理由が伝えられ、組織は本当の原因をつかめません。
その結果、同じ問題を抱えたまま次の離職が起きてしまいます。
兆候が見えにくい段階で本音を把握する仕組みが、離職防止の鍵になります。
管理職・人事が取り組める静かな退職への対策
静かな退職への対策は、無理にやる気を引き出すことではありません。頑張りが報われ、声が届く環境を整えることです。ここでは管理職と人事がそれぞれの立場で取り組めるポイントを紹介します。
期待と役割をすり合わせる
最初に取り組みたいのは、上司と部下の間で期待される役割をすり合わせることです。
静かな退職の背景には、「何をどこまでやれば評価されるのかわからない」という不透明さが隠れていることがあります。
1on1などの場を活用し、期待している役割や成果、本人が今後挑戦したいことを率直に話し合うことが出発点になります。
注意したいのは、面談を上司からの指示を伝える場にしないことです。
部下の話を最後まで聴き、仕事上の困りごとや負担感を確かめる時間を取ることで、信頼関係が少しずつ築かれます。
最低限の業務を確実にこなしていること自体は正当に認めたうえで、次の一歩を一緒に考える。
この姿勢が、反発を生まない関わり方につながります。
静かな退職の背景には、「何をどこまでやれば評価されるのかわからない」という不透明さが隠れていることがあります。
評価とフィードバックを透明にする
評価への納得感を高めるには、評価基準を明確にし、フィードバックの質を上げることが欠かせません。
何が評価されるのかを事前に共有し、結果を伝える際には根拠となった行動や成果を具体的に示します。
そうすることで、「見てもらえている」という実感が生まれます。
年に一度の評価面談だけでなく、日常的なフィードバックの積み重ねも重要です。
目立つ成果だけでなく、周囲のサポートや地道な改善といった見えにくい貢献を拾い上げる工夫も効果的です。
こうした貢献が評価されない職場では、社員はそれを「やらなくてよい仕事」と判断するようになります。
令和元年版の労働経済白書でワーク・エンゲイジメントが特集されたように、働きがいを高める取り組みは組織運営の重要なテーマです。
本音を拾う仕組みを複数用意する
1on1や評価面談は大切ですが、上司との関係によっては本音を言いにくいという限界があります。
特に、上司自身に関わる不満や組織の方針への疑問は、対面ではなかなか口にできません。
静かな退職の兆候をつかむには、面談に加えて、立場を気にせず意見を出せるチャネルを用意することが有効です。
具体的には、定期的なサーベイや、匿名で投稿できる意見箱などが挙げられます。
匿名性が守られていれば、普段は表に出ない率直な声が集まりやすくなります。
ただし、集めるだけでは逆効果になりかねません。
寄せられた意見への対応方針や、見送る場合はその理由を全体に共有する。
声が組織を動かしていることを示すサイクルを回すことが大切です。
こうした課題に組織として取り組むには、従業員が匿名で声を上げられる仕組みづくりも有効です。みんばこのようなクラウド目安箱ツールを活用することで、現場のリアルな声を早期にキャッチし、問題が深刻化する前に対処できます。
本音の把握が対策の出発点になる理由
静かな退職への対策で最も重要なのは、会社が想定している課題と、社員が実際に感じている課題のずれをなくすことです。本音を起点にすることで、施策の精度は大きく変わります。
想定されるケース
たとえば、エンゲージメントの低下を受けて研修や表彰制度を拡充したのに、社員の反応が薄いままという状況がよく見られます。
会社は良かれと思って施策を打っていても、社員が本当に問題だと感じていたのは業務の進め方や情報共有のあり方だった。
そうしたずれが起きているケースです。
このずれが生まれるのは、施策を決める側が社員の本音に触れる機会を持てていないためです。
対面のヒアリングでは当たり障りのない回答が返ってきやすく、経営層や人事が把握している課題と現場の実感は離れていきます。
施策を考える前に、まず現場の声を正確に集めること。
遠回りに見えても、これが最も確実な道筋です。
会社は良かれと思って施策を打っていても、社員が本当に問題だと感じていたのは業務の進め方や情報共有のあり方だった。
みんばこ導入企業の事例
みんばこ導入企業(人材紹介事業・プラットフォーム事業・ウェブサービス事業、500〜1,000名規模)では、組織の拡大に伴い、採用者一人ひとりと密な関係を保つことが難しくなっていました。
ケア面談を設けても離職率への効果は薄く、新卒・中途の社員は上司に疑問や懸念を口に出せません。
離職面談でも本音はほとんど聞けなかったといいます。
そこで、新卒・中途入社社員向けのケア窓口としてみんばこを活用しました。
人事・採用チームの部長は「みんばこを導入して驚いたのは、今まで私達が認識していた課題はどうでもよくて、ぜんぜん違うところに課題感を持っていたということです。
」と語っています。
会社の認識と社員の課題感のずれが、本音を通じて初めて明らかになった形です。
さらに、離職を決めるまでの要因や違和感を、気づいたタイミングで相談してもらえるようになりました。
上層部の意図を一部だけ切り取って誤解し、辞めてしまう「勘違い離職」を防げている手応えがあるとのことです。
匿名への不信感はあったものの、心理的安全性を確保する手段として重要だと実感しているといいます。
みんばこは社員の普段は言えないホンネを匿名で届けるクラウド目安箱サービスです。

- 完全匿名で投稿・返信が可能。誰が書いたかは管理者にもわかりません。
- 投稿後も双方向チャットで匿名のまま継続的にやり取りできます。
- スマートフォン・PCどこからでもアクセス可能。導入もかんたんです。
よくある質問
Q. 静かな退職をしている社員は、どう見分ければよいですか?
A. 静かな退職は、業務を最低限こなしているため外から判断しにくいのが特徴です。会議での発言や改善提案が減った、以前は引き受けていた周囲のサポートをしなくなった、将来のキャリアについて話さなくなったといった変化が手がかりになります。ただし、行動の変化だけで決めつけるのは避けてください。1on1や匿名の意見収集などを通じて、背景にある本音を確かめることが重要です。
Q. 静かな退職は悪いことなのでしょうか?
A. 決められた業務をきちんと行い、私生活とのバランスを大切にすること自体は、正当な働き方です。問題になるのは、その背景に「頑張っても報われない」「言っても変わらない」という諦めがあり、組織への信頼が失われている場合です。個人を責めるのではなく、諦めを生んでいる職場の要因に目を向けることが、建設的な対策の第一歩になります。
Q. 静かな退職をしている部下には、どう声をかければよいですか?
A. まずは、最低限の業務を確実にこなしていることを正当に認めることから始めると、警戒心を和らげやすくなります。そのうえで、仕事上の困りごとや負担に感じていること、今後やってみたいことなどを、評価と切り離した場で聴いてみてください。いきなり意欲や成果の向上を求めると、反発や諦めを強めるおそれがあります。信頼関係を築くことを優先しましょう。
Q. 管理職やベテラン社員でも静かな退職は起こりますか?
A. 静かな退職は特定の年代や役職に限らず起こりうるものです。管理職の場合、上と下の板挟みや権限のなさ、評価への不透明感から、組織の方針に積極的に関わらなくなることがあります。ベテラン社員も、キャリアの先行きが見えないことや役割の変化をきっかけに、関与を弱める場合があります。立場に応じて背景が異なるため、それぞれの声を個別に把握する視点が必要です。
Q. 匿名で意見を集めると、誹謗中傷ばかりにならないか心配です。
A. 匿名の意見収集を始める際に、多くの組織が抱く懸念です。利用目的や投稿のルールをあらかじめ明確に示し、建設的な意見を歓迎する姿勢を伝えることで、投稿の質は安定しやすくなります。また、寄せられた声に誠実に対応し、改善につながった事例を共有していくと、仕組みそのものへの信頼が高まります。厳しい意見も、組織の課題を知る貴重な手がかりとして受け止めることが大切です。
Q. 静かな退職への対策の効果は、どのように測ればよいですか?
A. 定期的なエンゲージメントサーベイで、仕事への熱意や組織への信頼度の変化を追うことが基本になります。あわせて、改善提案の件数、匿名の意見箱への投稿数とその内容の変化、離職率や退職理由の傾向なども参考になります。数値だけでなく、社員の声の質がどう変わったかを見ることも重要です。短期間で劇的な変化を求めず、継続的に観測して改善を重ねる姿勢が求められます。
まとめ
- 静かな退職とは、在籍したまま決められた業務以上の関与をしなくなる状態で、日本では熱意ある社員の割合が国際的に低い水準にある
- 主な原因は、評価や処遇への納得感の低さと、「声を上げても変わらない」という経験の積み重ね
- 放置すると生産性の低下や意欲ある社員への負担集中が起こり、突然の離職につながるおそれがある
- 対策の柱は、期待と役割のすり合わせ、評価とフィードバックの透明化、本音を拾う仕組みづくり
- 会社が想定する課題と社員の課題感のずれをなくすには、本音を起点にした施策設計が欠かせない
静かな退職の兆候は、対面ではなかなか表に出てきません。匿名で本音を集められる仕組みを取り入れることで、見えにくい課題を早い段階でつかみやすくなります。
静かな退職を防ぐ第一歩は、社員が口に出せずにいる本音を知ることです。匿名だからこそ届く声を、組織づくりに活かしましょう。
社員の本音や小さな違和感を早めにすくい上げるために活用されているツールはこちらです。詳しくはこちら
- 上司に言えない不満も集められますか?
みんばこは匿名で投稿できるため、上司や組織に対する率直な意見も寄せられやすくなります。 - 匿名の意見に返信して、詳しく聞くことはできますか?
投稿者の匿名性を保ったまま、管理者が返信してやりとりできるため、背景や詳細を確かめながら対応を進められます。 - 離職防止の取り組みにも使えますか?
新卒・中途社員のケア窓口として導入し、離職につながる違和感を早い段階で相談してもらえるようになった企業もあります。



