「同僚から毎日個人LINEが届く」「帰宅ルートを先回りされている気がする」――そんな訴えを受けたとき、人事・管理職はどう動けばよいのでしょうか。社内ストーカーは放置するほど被害が深刻化し、離職・訴訟・企業イメージの毀損へと連鎖します。本記事では相談受付から再発防止まで実践的な手順を解説します。
「社内ストーカー」は法律上の用語ではありませんが、職場内で発生する特定個人への執拗なつきまとい行為を指し、ストーカー規制法やハラスメント規制の対象となり得ます。
ストーカー規制法との関係
ストーカー規制法(平成12年法律第81号)は、恋愛感情などを起因とするつきまとい・連絡・監視行為を規制しています。
同僚や上司による行為であっても、法律の要件を満たせば刑事罰の対象になります。
具体的には、面会・交際の強要、連続したメッセージ送信、住所や行動の監視、名誉を傷つける文書の送付などが規制対象行為として列挙されています。
職場という場所は例外にはなりません。
一方で、恋愛感情が動機でないケース(嫌がらせ目的の監視など)はストーカー規制法の対象外となる場合があり、その場合は脅迫罪・名誉毀損罪・パワーハラスメントとして別途対処が必要です。
同僚や上司による行為であっても、法律の要件を満たせば刑事罰の対象になります。
職場ハラスメントとしての性質
厚生労働省の指針では、セクシュアルハラスメントはもちろん、個人の尊厳を著しく傷つける行為全般について事業主に防止措置義務を課しています。
社内ストーカー的行為はこの枠組みにも該当します。
被害者が「大げさに思われるかも」と申告をためらいやすい点が社内ストーカーの特徴です。
相談を受けた時点で既に被害が進行していることが多く、初動の速さが被害拡大防止の鍵を握ります。
企業には安全配慮義務(労働契約法第5条)もあり、社員が安全に働ける環境を整える法的責任があります。
被害を把握しながら放置した場合、企業自体が損害賠償を求められるリスクがあります。
社内ストーカーが起きやすい職場の特徴
社内ストーカーは突発的に起きるのではなく、風通しの悪い組織風土や相談しにくい環境が温床になることが少なくありません。
「言いにくい」文化が被害を長期化させる
みんばこに寄せられる声では、「上司に相談したら大げさと言われた」「加害者が古参社員で誰も動いてくれなかった」というケースが目立ちます。
心理的安全性が低い職場ほど、被害者の沈黙が続きます。
相談窓口が形式的に存在しても、担当者が加害者の上司と近い関係だったり、匿名性が保証されていなかったりすると、実質的に機能しません。
窓口の「使いやすさ」が被害の早期発見に直結します。
例えば、製造業のA社では、フロア内の人間関係が密すぎるため、女性社員が2年間にわたって同僚のつきまといを誰にも相談できなかった事例があります。
発覚後の対応コストは、早期対処の数倍に上りました。
心理的安全性が低い職場ほど、被害者の沈黙が続きます。
テレワーク・SNS普及による新たなリスク
オンライン会議ツールやSlack・LINEなどのビジネスチャットが普及したことで、就業時間外にも接触できる経路が増えました。
デジタルストーキングは証拠が残りやすい反面、被害者が「業務連絡かもしれない」と判断に迷うケースが増えています。
位置情報の共有機能やSNSの「いいね」の過剰な連打など、一見無害に見える行為が積み重なってストーカー的行為に発展するパターンも見られます。
グレーゾーンを早期に把握できる相談体制が重要です。
テレワーク中心の職場では管理職が日常的な変化に気づきにくく、被害が表面化するまでに時間がかかる傾向があります。
定期的な1on1や匿名アンケートで変化を早期に察知する仕組みが有効です。
人事・管理職が取るべき初動対応の手順
相談を受けた瞬間から組織は「対応義務」を負います。感情論ではなく、事実確認→被害者保護→加害者対応の順で冷静に進めることが重要です。
ステップ1:相談受付と記録の確保
被害者が申告してきた段階で、まず「話してくれてありがとう」と受け止めの言葉を伝えます。
「証拠がないと動けない」という返答は二次被害につながるため厳禁です。
聴取内容は日時・場所・行為の内容を文書で記録します。
被害者が保有するスクリーンショット、通話履歴、メールのヘッダー情報などはそのまま保存してもらうよう依頼します。
削除してしまうと後の対応が困難になるため、初回面談時に必ず伝えておきましょう。
担当者は人事の中でも守秘義務を徹底できる少人数に限定します。
加害者との関係がある管理職は対応から外すなど、情報管理の徹底が被害者の安心感と信頼性確保につながります。
「証拠がないと動けない」という返答は二次被害につながるため厳禁です。
ステップ2:被害者の安全確保と隔離措置
事実確認と並行して、被害者と加害者が接触しにくい環境を整えます。
座席変更、勤務時間のシフト調整、テレワーク許可など、まず物理的・時間的な距離を置く措置を優先します。
被害者に対しては、相談内容が加害者に漏れないこと、職場での立場が不利にならないことを明確に伝えます。
この保証がないと、被害者が途中で「取り下げたい」と言い出すことがあります。
外部の相談機関(警察の生活安全課、都道府県の配偶者暴力相談支援センターなど)の情報も提供し、組織対応と並行して公的機関への相談を勧めることで、被害者の選択肢を広げます。
ステップ3:加害者への事実確認と処分
加害者に対しては、被害者の特定につながる情報を伏せたうえで事実確認の面談を行います。
面談には証人として別の人事担当者を同席させ、発言内容を記録します。
確認された事実に基づき、就業規則のハラスメント規定に照らして処分を検討します。
口頭注意・書面警告・配置転換・出勤停止・懲戒解雇まで、行為の悪質性と継続性で段階を判断します。
処分後も加害者の行動をモニタリングし、再発が認められた場合はより厳しい対処を行う旨をあらかじめ伝えておくことが抑止力になります。
一度の処分で終わりにしないという姿勢が重要です。
こうした課題に組織として取り組むには、従業員が匿名で声を上げられる仕組みづくりも有効です。みんばこのようなクラウド目安箱ツールを活用することで、現場のリアルな声を早期にキャッチし、問題が深刻化する前に対処できます。
再発防止と相談しやすい組織づくり
個別対応だけでは再発は防げません。「被害が上がってくる仕組み」を組織に埋め込むことが長期的な解決策になります。
匿名相談・内部通報の仕組みを整える
被害者が名前を出さずに状況を伝えられる匿名相談ルートは、早期発見の効果が高い手段です。
紙の目安箱はプライバシーリスクがあるため、デジタルの匿名投稿ツールを活用する企業が増えています。
相談窓口は「ある」だけでなく「使われる」ことが重要です。
定期的に社員へ周知し、過去に相談が活かされた(個人が特定されない形で)という実績を示すことで、利用率が高まります。
小売業のB社では、匿名でのデジタル相談窓口を導入後、半年間でハラスメント関連の申告件数が3倍になりました。
これは被害が増えたのではなく、従来は埋もれていた声が表面化した結果です。
紙の目安箱はプライバシーリスクがあるため、デジタルの匿名投稿ツールを活用する企業が増えています。
管理職向け教育と定期的な実態調査
社内ストーカーの早期発見は現場管理職の観察眼にかかっています。
「部下の様子が変わった」「特定の社員を避けている」といった変化に気づくためのチェックリストを管理職に提供することが有効です。
年1回以上の匿名アンケートで、職場の人間関係やハラスメントに関する実態を定期的に把握する企業が増えています。
問題が顕在化する前に兆候をつかめると、初動対応のコストを大幅に抑えられます。
教育は知識付与だけでなく、ロールプレイ形式で相談受付の練習をすることが管理職の自信につながります。
「どう反応すべきかわからない」という不安を減らすことで、相談を受けた際の適切な初動が期待できます。
みんばこは社員の普段は言えないホンネを匿名で届けるクラウド目安箱サービスです。

- 完全匿名で投稿・返信が可能。誰が書いたかは管理者にもわかりません。
- 投稿後も双方向チャットで匿名のまま継続的にやり取りできます。
- スマートフォン・PCどこからでもアクセス可能。導入もかんたんです。
よくある質問
Q. 社内ストーカーの加害者が「好意からの行動」と主張した場合、どう対処すればよいですか?
A. 加害者の主観的な動機にかかわらず、被害者が不快・恐怖を感じた事実が重要です。就業規則に基づき行為の客観的事実を評価し、意図の有無を理由に対処を遅らせないことが原則です。意図がないことは処分の軽減要素にはなっても、対応しない理由にはなりません。
Q. 被害者が「公式な対応は望まない、ただ聞いてほしかっただけ」と言った場合は?
A. 被害者の意向は尊重しつつも、企業としての安全配慮義務は免れません。強制的な調査は行わず、まず継続的な見守り体制と匿名相談ルートを整備します。被害者が気持ちを変えたときにすぐ動ける準備を整え、「いつでも相談できる」と伝え続けることが大切です。
Q. 加害者が優秀な営業職など会社への貢献度が高い社員の場合、処分に踏み切れません。
A. 業績と法令遵守は別の次元の問題です。対応を遅らせるほど被害者の離職リスクが高まり、訴訟になれば企業の損害は加害者の貢献を大きく上回ります。「貢献度が高いから多少は仕方ない」という判断は組織風土の崩壊につながり、他の社員の信頼も失います。
Q. 相談窓口を設けたいが、小規模な会社で人事担当者が1人しかいない場合は?
A. 外部のEAP(従業員支援プログラム)や弁護士事務所の匿名相談窓口を活用するのが有効です。また、匿名デジタル投稿ツールを導入すると、担当者の負荷を抑えながら相談を受け付ける体制を整えられます。社内1人体制では利益相反が起きやすいため、外部委託の検討をお勧めします。
まとめ
この記事のポイント
- 社内ストーカーはストーカー規制法・ハラスメント規制の対象となり、企業には安全配慮義務がある
- 相談を受けた瞬間から対応義務が生じる。「証拠がないと動けない」は二次被害につながる禁句
- 初動は①記録確保→②被害者の物理的隔離→③守秘を保った加害者への事実確認の順で進める
- 匿名相談ルートの整備と管理職教育の組み合わせが再発防止の鍵
- 業績・立場にかかわらず公平に対処することが組織への信頼を守る
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